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【キブンの時代】第2部 危険はどこに(4)中国製食品「とにかく怖い」 (産経新聞)

 ■不安と鬱憤、一気に噴出

 突然の容疑者拘束の一報だった。子供を含む日本人10人が冷凍ギョーザを食べて健康被害を受けた中国製ギョーザ中毒事件から2年余り。3月26日、中国公安当局の拘束が明らかになった中国・天洋食品の元臨時工、呂月庭容疑者(36)は調べに、「正社員にしてもらえなかった」と待遇の不満を供述した。

[フォト]日中改善・食の安全 なお遠く

 問題となった冷凍ギョーザが売られていた千葉県内のスーパー近くに住む女性は翌27日、「中国製食品への不安感はまだ消えない」としながらも「また買って食べています」と話した。都内の主婦は「ギョーザ事件自体を忘れていた。犯人、捕まっていなかったんだ、という感じ」と言う。

 平成20年1月末の事件発覚当時、世間の衝撃は大きかった。当該食品や同じ工場で製造された冷凍食品が回収対象になり、多くのスーパーから冷凍食品が撤去された。会社名に「中国」と入っていた食品メーカーは倒産した。社名が一因とされた。

 生活経済ジャーナリストの柏木理佳(41)は冷凍食品が安売りされていた様子を思いだす。普段は買わない冷凍食品を「あのときは買ってしまった」と笑う。

 「とにかく中国は怖い」という風潮だった。日本冷凍食品協会が会員29社を対象にしたアンケートによると、20年の調理冷凍食品の輸入高は数量ベースで前年の3割減、中国だけでは4割減に落ち込んだ。

 ところが、20年夏ごろから「中国国内でも中毒」「その件で工場の元従業員ら聴取」と一部で報道され始めていた。特定工場での不祥事の疑いが濃くなっても中国バッシングはやまなかった。中国で暮らした経験もある柏木は、当時の状況を「中国への鬱憤(うっぷん)が一気に出た」とみる。

 中国経済が急成長し、日本の地位を脅かし始めた。職場でも中国人が幅を利かせ、ビジネスでの発言力も強くなった時期だった。

 「中国への不安と批判が渦巻いていたが、日本国民は心の中にとどめていた。実際に被害が出て、不信感に火がついた」(柏木)

 ただ、柏木は一般の人の中国不信は「よく分からないけど、何か怖い」というものだという。「日本人は振り回されやすく、コロコロ変わる。明確な意思はないのに、結論をつけたがっただけだ」

 日本冷凍食品協会常務理事の山本宏樹(65)は昨年、消費者団体との「中国の食品工場視察報告会」で愕然(がくぜん)とした。ギョーザ事件での聴取が報道された後にもかかわらず、事件の犯罪性に疑問があるかのような質問を受けたからだ。「消費者問題に詳しく、情報収集は徹底しているはずなのに」と腑(ふ)に落ちなかった。

 あれほどバッシングされた中国製食品や冷凍食品への抵抗感は薄れてきた。

 日本冷凍食品協会が冷凍食品を月1回以上利用する25歳以上の既婚女性500人を対象に昨年8月に調べたところ、「冷凍食品を週2、3回以上利用する」は、事件直後の20年7月の調査で26・5%だったのに対し、44・4%に増加した。

 山本は「メーカーの安全対策への努力とともに不景気もある」と言う。日本政策金融公庫の消費者動向調査で、20年5月に「食の志向」の中でトップだった「安全志向」(52・3%)が今年1月には21・0%に激減。反対に19・8%だった「経済性志向」が42・6%で首位に躍り出た。

 経済や気分に左右される食。食品メーカーOBの山本は「政治が『消費者が求めているから』と規制に走り、行政が追随し、事業者が口をつぐみ、メディアがあおった結果、問題が大きくなった。消費者自身も農業の実態を知ろうともせず責任転嫁する。次世代の農業や食をどうするか、その視点で取り組まないと構造は変わらない」と憂える。(敬称略)

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